2026.07.17

一箱ができるまで

旋盤で金属を削る、東京・墨田区の工場

ひとつの箱ができるまでに、何が起きているのか。今日は、その話をさせてください。

先にお伝えしておくと、tamatebacoは、同じものがふたつとありません。機械で同じ形を大量に抜いているのではなく、金属の塊を、ひとつずつ削って形にしているからです。だからここから先の工程は、あなたのもとに届く一台にも、そのまま起きています。

金属の塊から始まります

金属を削る、墨田区の工場
金属の塊を、少しずつ削って形にしていきます

はじまりは、手のひらにずしりと重い、金属の塊です。型に流し込むのでも、型で抜くのでもありません。いらない部分を、少しずつ削り落としていきます。

これは、とても回り道な作り方です。ひとつの箱のために、材料の多くは削りくずになって床に落ちます。それでも、この方法でしか出ない面と、この方法でしか出ない強さがあります。落としても歪まない箱は、一枚の塊から削り出したからこそ生まれます。

黒くしてから、もう一度削ります

黒く仕上げた蓋と、鏡のように光る一本の線
黒の中に、角の光がひとすじだけ戻ります

本体は、黒く仕上げます。塗った黒ではありません。金属の表面そのものを、光を吸い込むような深い黒にします。

ここが、少し変わっています。黒くしたあとで、角だけをもう一度削るのです。すると、黒の中に、金属そのものの光がひとすじだけ戻ってきます。全部を光らせないから、その一本が際立ちます。

合わせ目に走る、一本の線

ふたを少し開けた、黒い金属の箱
合わせ目のずれは、閉じたときの表情を変えてしまいます

ふたと本体の合わせ目には、鏡のように光る細い線が一本、走っています。ここが、いちばん気を使うところです。ほんのわずかでもずれると、ふたを閉じたときの表情が変わってしまいます。

実際に手に取ると、まず気づくのは重さです。見た目より一段重く、手のひらが、これは本物だと知ります。そして、ふたをそっと下ろすと、金属の重みだけで、コトッと低い音がして止まります。この手ごたえは、あとから足した仕掛けではありません。

最後は、手のひらで確かめます

完成した、黒い金属の箱 tamatebaco
設計図と合わないものは、工場から外に出しません

削り終えても、まだ終わりではありません。ひとつずつ、寸法を確かめます。髪の毛よりずっと細かい違いも、見過ごしません。設計図と合わないものは、工場から外に出しません。

ここは、機械の部品を作るときと、同じ厳しさです。ふだん私たちが作っているのは、機械の中で動く、名前もつかない金属の部品です。その同じ手と、同じ目で、この箱も作っています。

ひとつの箱に費やす時間を、こうして積み上げていくと、なぜこの作り方なのか、その理由は語るまでもなくなります。急いでたくさん作るより、ひとつずつ、ていねいに。それが、私たちの選んだやり方です。

この箱に起きていること

  • 落としても歪まない、金属の塊からの削り
  • 光を吸い込む黒と、角だけに残した金属の光
  • 合わせ目を走る、鏡のように光る一本の線
  • 見た目より一段重い、手のひらに伝わる本物の重さ
  • 設計図と合わなければ外に出さない、ひとつずつの確認

その手ごたえは、写真では伝えきれません。まずは、この箱をご覧ください。

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